エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地であり、国際政治の焦点でもある。19世紀には西洋列強が「聖地管理権」を掲げてしのぎを削り、20世紀になるとユダヤ、パレスチナ双方のナショナリズムの象徴となった。現在は米国の内政・外交のホット・イシューだ。
エルサレムの最終的な地位は国連決議などの交渉で決めるとして、国際社会は一方的な変更を認めてこなかった。現状維持こそ、象徴が持つ爆発力を制御する最善の策だった。米国も同じ立場だった。
しかし、トランプ米大統領は昨年12月初め、エルサレムをイスラエルの首都と認め、テルアビブにある米大使館をエルサレムに移す、と宣言した。この首都公認と大使館移転は、米大統領選挙での公約の決まり文句だったが、誰も実行してこなかった。トランプ氏はそのタブーを破ったのである。